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さわだ行政書士事務所のブログ 二足のわらじの奮闘日記

京都府亀岡市にある「さわだ書店」と「さわだ行政書士事務所」。書店をしながら行政書士も頑張っています。

相続放棄すれば万事OK?

遺産を相続すると聞くと、「財産が転がり込むんでしょ?いいな。」って、思いません?

テレビドラマでも、財産をめぐって相続人が骨肉の争いをしたりするじゃないですか。

もう、ドロドロの。

 

遺産と言えば、「どうやって多くの財産を引き継ぐのか」、ということに意識が向きがちですが、財産はプラスばかりではありませんよね。

例えば、「借金」。マイナス財産の最たるものですね。

もちろん、これも相続対象となる「遺産」です。

預貯金などから借金を差し引いてマイナスになる遺産であれば、皆さん考えるのが、「財産を放棄しよっかな。」じゃないですか?

これはまあ、よくあることだと思います。

 

しかし、財産はプラスなのに、相続放棄をしようとすることがあります。

「なんで?」と思いたくなりますが、それは例えば、資産価値が高くない不動産を、相続したくないという場合などです。

不動産であれば、金額の大小はありますが、原則として固定資産税が所有者には課されます。

これは、例えば空き家などで、その不動産を利用していないのなら、負担ですよね。

しかも、土地の上に建物があれば、老朽化による修繕も必要で維持管理費がかかりますし、火災などが起これば責任も問われる事態が想定されます。

だったらいっそ手放したいと思うのですが、田舎であれば市街化調整区域なら法律上も売却が制限されますし、そもそも田舎は買い手がつきにくく、売ろうにも売れない状況があります。

 

それならば、相続を機に手放そうと考えて、「相続放棄」をするのです。

相続放棄をすれば、相続人としての地位がそもそも無かったものとみなされますから、プラスもマイナスも一切合切で相続されません。

つまり、言葉が悪いかもしれませんが、資産価値がない建物と、「縁が切れた」ことになるはずですよね。

この「相続放棄」の仕組みを利用するため、相続人の間で相談をして、その全員が相続放棄をしたならば、遺産を相続することから免れることができます。

この場合は土地も含めて、最終的には国庫に帰属することになります。

 

「やれやれ、これでもう安心!負担だった不動産も手放せて一石二鳥!」と思っていると、その認識はちょっと甘いかもしれません。

 

なぜなら、民法940条に、
相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。』とあります。

これは、どのような意味かと言いますと、私なりの口語訳をすれば、

相続放棄するのはいいけど、次の相続人が決まるまでは、ちゃんと面倒みなさいよ。」という感じです。

 

つまり言い換えれば、「管理責任を免れるのは、次の相続人が見つかってからですよ。」ということで、しかも、ここで重要なのが、条文上は「管理責任を負うのは、最後に相続放棄をした人」という解釈が成り立つことなのです。

 

ここで言う、「最後に相続放棄をした人」って、誰ですか?

例えば、父と息子の2人家族だったとします。母は数年前に他界しています。

この父親は地方の田舎で農業を営んでいて、家屋と納屋は、資産価値がほとんどないほどに老朽化して、取り壊す解体費に500万円ほどかかるとします。預貯金はほとんどありません。

この場合、相続人は息子になるのですが、息子はあっさり相続放棄の手続きをしました。

亡き父には5人の兄弟姉妹がいたとすれば、息子の相続放棄により、その兄弟姉妹は相続人となりますが、やはり財産は引き継ぎたくないので兄弟姉妹の全員が相続放棄をしたとします。

 

ここでよく分からないのが、この場合の「相続放棄をした最後の相続人」が、一体誰になるのか。

時間の差ですか?それなら、5人の兄弟姉妹で相続放棄の手続きをした早い者勝ちですか?

それとも、同順位で相続人になったのだから、相続放棄のタイミングに関係なく、5人の共有で管理責任が生じるのでしょうか?

このケースでは、管理義務者としての立場が一番重いのは、最初に相続放棄した「息子」ですが、「最後に相続放棄をした」には該当しないと思いますから、どうなんでしょう?

 

私にはこのケースの経験がまだなく、調べた限りでは、明確な答えが見つかりませんでした。

今度、弁護士さんに聞いてみます。 

 

いずれにしても、相続人の全てが相続放棄をしても、すんなり国庫に返納(帰属)するわけではありません。

相続財産の利害関係者が家庭裁判所に申し立てをして選任される「相続財産管理人」により、財産を整理した結果、残った財産がようやく国庫に帰属することになります。

また、相続財産管理人が選任されることで、相続放棄をした人は財産の管理義務から免れることになります。

 

なお、相続財産管理人の選任を申し立てると、家庭裁判所はケースに応じて、申立人に「予納金」を求めることがあります。

その額は高ければ100万円ぐらいになることもありますので、留意してください。

 

財産を放棄すれば、あとは国が面倒を見てくれるような、都合の良い便利なことはなく、国もそのあたりは、ちゃんと制度として考えているんですね。

 

よくできてますよね。民法って。