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さわだ行政書士事務所のブログ 二足のわらじの奮闘日記

京都府亀岡市にある「さわだ書店」と「さわだ行政書士事務所」。書店をしながら行政書士も頑張っています。

免許なしに、「どぶろく」は作れないの?

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暖冬とか温暖化とか言われていますが、ここ数日、これほど寒いと体を温めるのに工夫が必要ですよね。

私はもっぱら、ユニクロの「極暖」インナーに、使い捨てカイロを多用して凌いでいます。

それでも、寒い!

聞くところによれば、今年は「超極暖」が発売されたそうで、これに手を出そうか思案中です。

でも、この一線を超えれば、普通のヒートテックには戻れそうにない気がします。

 

さて、冬に体を温めるものといえば、「お酒」ではないですか?

寒い夜は、燗をした日本酒で一杯、なんて方も多いと思います。

 

最近では流通の発達からご当地のお酒が手に入りやすくなり、またニーズの多様化によるブームで、呑み比べができるなど、日本酒、焼酎、ビール、ワインなど、種類や銘柄によらず、お酒の楽しみ方が増えてきていますよね。

 

また、最近ではインターネットの普及により、食事に関してはクックパッドなどで手軽にレシピが手に入る時代ですから、「お酒を自分で作りたい!」という発想を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

実際、この日本でも昔は当たり前に、家庭で「どぶろく」を作っていた時代がありました。

 

しかし現在は、免許なしにお酒を作って(造って)はダメですよ。

「お酒(酒類)」を製造するには、「酒類製造免許」を取得する必要があるからです。

「個人で飲む」という自家消費であっても、免許なしにお酒を造ると、密造として酒税法第54条により、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられるとともに、製造された酒類酒母、もろみ、原料、副産物、機械、器具又は容器を所有者の如何に関わらず没収されることになっています。

どぶろくは、この「酒類」に含まれます。酒税法では「酒類」をアルコール分1度(=エチルアルコール容量で1%)以上の飲料としており、もしこれを超えるアルコール度数の飲料を免許を受けないで製造した場合には、個人による自家消費を目的とした「どぶろく」であっても、酒税法違反となります。

厳しいですよね。  

 

では、免許を取れば造れるの?ということですが、これが結構、ハードルが高いんですよ。

「個人で造って、家で楽しみたい」レベルでは、取れる免許ではありません。

 

酒類製造免許の取得要件

①法定最低製造量を上回ること

年間の製造量が、酒類の種類ごとに定められた最低製造量を上回ることが必要で、「どぶろく」については、日本の酒税法では、「雑酒」のうち、「その他の雑酒」の品目に分類されることから、1年間で6kℓ以上を製造することが必要です。

 

②人的要件を満たすこと

申請者が、酒類・アルコール関係の許可取消処分を受けたことがないこと、国税又は地方税の滞納処分を受けたことがないなど、人的に審査されます。

 

③場所的要件を満たすこと

正当な理由がないのに取締り上、不適当と認められる場所に製造場を設けようとしていないこと。

具体的には、食堂などと同一の場所でないことなど。

 

④経営基礎要件を満たすこと

免許申請者が、破産者で復権を得ていない場合のほか、その経営の基礎の薄弱であると認められる場合に該当しないこと。

具体的には、税金を滞納していないか、銀行取引停止処分を受けていないか、など。

 

酒類の製造について、必要な技術的能力を備えていること

 免許申請者は、醸造・衛生面などの知識があり、かつ、保健衛生上問題のない一定水準の品質の酒類を継続的に供給することができ、不測の事態が生じた場合に対応できる能力を有していること。

 

⑥製造場の設備が十分であること

 酒類の製造又は貯蔵等に必要な機械、器具、容器などが十分に備わっているとともに、申請醸造場の設置が工場立地法、下水道法、水質汚濁防止法食品衛生法等製造場の設備に関する法令及び地方自治体の条例に抵触していないこと。

 

以上のような要件がなければ、「酒類製造免許」を取得することはできません。

この基準において、要件が一番厳しいのは、①「法定最低製造量を上回ること」ではないでしょうか。

どぶろくの場合、「1年間で6kℓ以上を製造」しなければなりませんから。

なお、その量は鏡開きで使われる酒樽で換算すれば、一般的な一斗樽は18リットルですから、これを6kℓで計算すると一斗樽では年間333個以上、しかも継続的に作ることが求められます。

かなりの量と言えますよね。

 

でも、この要件が緩和される場合があります。

それは、お酒を造る場所が「どぶろく特区」内にあることです。

京都には現在、4地区が国家戦略特区として認定されています。

  ・酒呑童子の里大江どぶろく特区(福知山市

  ・京丹後のおいしい水と米でつくる どぶろく特区(京丹後市

  ・ふるさと舞鶴どぶろく特区(舞鶴市

  ・日本の原風景 ふるさと南丹どぶろく特区(南丹市

 

どぶろく特区」内であれば、製造免許の要件のうち、最低製造数量基準(年間の製造見込数量が6kℓに達していること)は適用しないこととされています。

それ以外の要件(上記で言えば、②~⑥)は、どぶろく特区であっても、満たさないといけません。

しかも、製造するのは「その他の醸造酒(濁酒)に限ること」です。

地ビールなどは対象外です。

 

しかも、どぶろく特区を活用するには、

  1.どぶろく特区内であること

  2.農業生産者であること(農業生産法人の組合員等を含む)

  3.酒類を自己の営業場において飲用に供する業を営む者であること

  4.「どぶろく」であること

  5.農業者である申請者が生産した米を原材料としていること

 

以上の要件等を満たすことが必要になります。

つまり、この「どぶろく特区」は、農業者が営んでいる農家民宿や農園レストランなどで「どぶろく」を提供する場合を想定しています。

個人が楽しむために規制緩和された制度ではないのです。

 

以前は、当たり前のように、農家ではどぶろくを造っていたのに、今は許されないのはなぜか?

その理由を探ると、国の施策が関係していることが見えてきます。

 

日本における酒の製造について、個人の酒造り(自家醸造)が事実上禁止されたのは、明治32年(1899年)に遡ります。

当時の国税に占める酒税の割合は3割を超えていましたから、国の税収をまかなう大きな柱でした。

この酒税による収入を維持したかったために、国は自家醸造までも禁止した経緯があります。

ちなみに現在では、国税のうち酒税が占める割合は約2%に落ち込んでいますので、自家醸造を禁止した当時の目的はすでに希薄となっています。

しかし現在においても、自家醸造を認めないとする法律(酒税法)は現存し、実際に、「どぶろく」の製造を争った最高裁の判決においても、「税収確保のために自家醸造を制限することは憲法に違反しないとして」原告の主張は退けられています。

 

興味深いのは、お酒は飲むものですから、所管は厚生労働省(保健所)かなとイメージしがちですが、「酒類製造免許」は、酒税法による「税務署の管轄」にあるということです。

個人で楽しむとしても、実質は合法にお酒を造れない現状は仕方ないとしても、それを禁止している理由が人の口に入ることによる「安全・安心」の面ではなく、国の税収を確保するのが目的というのは、少々、時代にそぐわなくなっているかと思います。

 

なお、どぶろくその他の醸造酒)の製造免許を受ける場合、登録免許税の額は、その免許1件につき15万円です。

 

また、酒税は、製造業者などが酒類をその製造場から移出したときや保税地域(外国から輸入された貨物を、税関の輸入 許可がまだの状態で関税を留保したまま置いておける場所のこと)から引き取ったときに納める税金です。

その税率は、数量による「従量課税方式」が採用されており、どぶろくその他の醸造酒)の場合は、現在は1リットル当たり140円となっています。

 

申請書類としては、以下のようなところが標準です

酒類製造免許申請書

②製造場の敷地状況

③建物等の配置図

④製造法を記したもの

⑤製造場の設備の状況

⑥事業の概要・収支の見込み・所要資金の額及び調達法

酒類の販売管理の方法

⑧誓約書(欠格事由に該当しないこと)

⑨申請者の履歴書(法人の場合は役員全員)

⑩住民票

⑪定款(法人)

⑫登記事項証明書(法人)

⑬契約書等の写し(土地・建物・設備等が賃借の場合)

地方税の納付証明書

⑮直近3事業年度の財務諸表

酒類の製造について必要な技術的能力を備えていることを示す書類

⑰土地・建物の登記事項証明書

⑱申請者の酒類製造場についての書類

 

申請に必要な書類は、地域によって異なりますので、ご留意くださいね。