さわだ行政書士事務所のブログ|京都・亀岡の相続・遺言・許認可|二足のわらじの奮闘日記

「さわだ行政書士事務所」と「さわだ書店」。京都府亀岡市で行政書士をしながら書店業も頑張っています。

養育費を自治体が立て替えてくれる!?明石市で注目すべき取り組みがスタート!

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養育費が支払われないという実際

 最近、離婚が多いですよね。

3組に1組は離婚している!?とか言われていますから。

しかし、厚生労働省が平成28年度に行った「全国ひとり親世帯等調査」では、ひとり親世帯の56%が、養育費を一度も受けたことがないと言います。

これって、衝撃的ですよね。

子どもが貧困する原因の一つと言えますね。

さらに、離婚後の母子家庭で養育費を定期的に受け取っている割合は、わずか20%程度だという調査結果もあります。

 

離婚後の養育費は、保証会社が立て替えるという取り組みがスタート

養育費が支払われていない世帯が多いという、この実態を改善するため、注目すべき取り組みを試験的に始める自治体があります。

それが、兵庫県明石市です。

 

養育費が滞った場合、明石市が委託した保証会社が、月5万円を上限に不払いの養育費を一人親世帯に払い、保証会社がその同額を相手方から「債権」として回収するというものです。

この月5万円はあくまで立替えで、その金額は明石市の税金から支払われます。

条件としては、公正証書にした離婚給付契約書(離婚合意書)もしくは調停調書にて養育費の合意の取り決めがされていることが前提となります。

今年の11月からモデル世帯を対象に実施されるそうなので、本格的に運用されるときには、いろいろと条件が加わるでしょうね。

 

そのときには、次のような条件が必要かなと思います(あくまで私の私見ですが)

  1. 離婚前から一定期間を当該自治体に住民登録して生活した世帯であること
  2. 離婚後も当該自治体で生活すること
  3. 保証会社には、成功報酬的な業務委託契約とすること
  4. 第三者機関が機能すること

 

1と2については、当然ながら必要となってきます。

理由は、明石市がこの取り組みを行う目的が、「子育て世帯の定住」にあるからです。

明石市で子育てをすれば、もし離婚という結果となっても、行政によるこのサービスが受けられるという安心感があれば、住民となることを選ぶ動機になりますよね。

すでに明石市では、中学生以下の子どもの医療費は無料であったり、第2子以降の保育料は無料とするなど、子育てを支援する様々な取り組みを実施されいるようです。

その効果もあって、実際に人口が増加して、税収(固定資産税が住民税など)が増えているそうです。

今回の養育費に関する取り組みも、住民を増やし、税収を増やして市民サービスの向上に繋げたいという考えがあることは、言うまでもありませんね。

でもこれって、市民にとっては、子育て世代に限らず有難い話ですよね。

市民サービスの向上、暮らしやすい街づくりのためにはお金(税収の確保)が欠かせませんから。

 

3の「保証会社には、成功報酬的な業務委託契約とすること」とした理由は、この制度を形骸化しないためです。

保証会社はあくまで、養育費の支払い義務者に代わって、養育費の立替えをするだけの存在です。

つまり、仮に債権(支払われるべき養育費)が回収できなければ、市民による税金が使われる訳で、これを食い止めるための仕組みが必要となります。

債権回収が成功しても失敗しても、その保証会社には同じ報酬が支払われたのなら、どうですか?

やる気に影響なくないですか?

市民の血税を大切にするためにも、保証会社には債権が回収できるよう、努力をしてもらわなければなりません。

そのためには、もし債権が回収できずに税金が充てられたときには、業務委託料を割り引くなどの取り決めが効果的かなと思います。

さらに、この委託を随意契約ではなく、過去の債権回収率などの実績から競争により、委託先を定期的に選定するような仕組みも必要かもしれません。

なにしろ、保証会社は民間企業なので、良くも悪くも営利目的で活動するものです。

それならば、競争原理にて実績があれば業績が向上する仕組みを行政側が提供できれば、税金の投入を最小限に留めることができるのではないでしょうか。

もちろん、無理な取り立ては、その債務者の生活を脅かすことになるので、十分に留意すべきことではありますね。

 

4の「第三者機関が機能すること」とした理由は、通常の監査では、実体までは見えないことが多すぎると思うからです。

単に税金を使って実施するだけの事業なら仕方ないのですが、養育費に関するこの制度は「本来支払うべき立場の者に代わって養育費を立て替える」という趣旨であるために、理想は”1円も税金を使わないこと”にあります。

自治体の監査は、税金の使途が適切であるのかを調査・監督するものなので、制度の適切な運営の如何については、別の専門機関が第三者の立場で調査するのが望ましいと考えられます。

ここに税金が投入されては本末転倒という考えもあるかもしれませんが、制度が形骸化されて、歯止めなく当たり前のように市の税収から養育費が捻出される事態となれば、支払い義務者は誰も養育費を支払わなくなります。

 

ここに、この制度の重要さがあると思います。

仮に明石市のこの取り組みが一定の効果を上げて、他の自治体も追随する流れになったならば、必ず上記のような問題が懸念されます。

つまり、明石市の成功事例通りに他の自治体で実施できるか否か、こんな重要な結果が、自治体の首長の本気度、熱意によって左右されるような事態は、避けなければなりません。

 

私もそうですが、明石市の取り組みが報道されたときに、これが全国的に当たり前になれば素晴らしいと思いました。

ということはつまり、とても耳触りの良い行政サービスに映るんです。

これを目玉に子育て世代を誘致する自治体も増えるでしょう。

でも、もしその実態が、内部では保証会社による回収率が低く、多くの税金が投入されている実態が常態化していたとしても、表面上は市民は分かりません。

つまり、せっかくの取り組みが形骸化していたのでは意味が無く、言葉は適切でないかもしれませんが、「客寄せパンダ」となることだけは、絶対に避けてほしいと思います。

 

ブックスタート事業の実態

例えば、私が知る例を挙げてみます。

「ブックスタート」事業って、ご存じですか?

これは、自分の住んでいる自治体から、例えば赤ちゃんの0歳検診のときなどに、絵本がプレゼントされるという取り組みです。

これも、とても耳触りの良い事業ですよね。いいことだと思います。

実際、全国の多くの自治体で実施されています。

しかし悲しいかな、これを本気で必要と考えて、本腰を入れて実施している自治体が、どれほどあるのか、疑問です。

 

この事業に税金を充てて、業者に丸投げしている自治体の例もある(多い?)のです。

その業者は全国の自治体を相手にブックスタート事業(受注から個別発送まで)を行っていますから、売上(利益)も莫大ですよね。

よって有利となるよう、絵本の出版社と販売条件の取り決めをしています。

具体的には、「この絵本なら、定価の3割引きで納品しますが、こっちの絵本は2割引きとなりますよ」とかです。

しかも、特定の絵本に限られます。

自治体からすれば、そりゃ同じ金額(原資は税金)で1冊でも多くの本を購入したいのですから、値引き率の良い絵本が、その購入対象になりがちですよね。

だとすれば、本当に良い絵本が、地域の子どもたちに渡っていることになりますか?

内容に関係なく業者もしくは出版社の売りたい本が、そもそも選定されていることなりませんか?

これもやっぱり、良い制度(取り組み)の形骸化なのです。

しかも、定価の2割引きとか3割引きなんて、変ですよ。

私は本屋でもありますので、実際のところ絵本も含め書籍の仕入れは、定価の約80%というのが実態です。

ということは、地元の書店が納入するとしても、定価割れが必死で赤字でなければ、その業者に対抗できません。

日本って、書籍や雑誌は全国一律の値段(再販制度と言います)ですよね。

でも、ブックスタートを全国的に手掛ける業者には、出版社はそれ以下の金額で納入する条件をもって、自治体に金額を提示します。

「自治体が子どもに本をプレゼントする」という素晴らしい取り組みの裏には、特定の民間業者及び出版社が独占的な利益を獲得することができる営利主義が、色濃く出ているのが現状です。

「安いから、この本に決めた!」では、自治体としてやっている意味がないですよ。

私から見れば、「手間も税金もかけたくないが、他の自治体もやっているし、市民へのアピールにもなるし、とりあえずやっておこう」という風に見えます。

そうでなければ、業者に丸投げなんて、しませんよ。

 

しかし、京都市は違います。

市の職員で図書に精通する担当者が協議して、本当に地域の子どもたちにプレゼントしたい本を無条件で選び、その本を地元の書店(組合)から仕入れます。

地元の書店は、特製のバックなどを用意して納入します。

これが税金の使われ方としては、適正だと思われませんか?

 

自治体によりサービスは大きく違います

明石市の養育費の取り組みとブックスタートを混同するのは違うと思いますが、先進的な取り組みは結局のところ、その自治体の本気度(気概があるか否か)が成功のポイントです。

明石市の市長は、大学時代は教育について学ばれてきたそうです。

そして弁護士出身であるために、子育て問題に直面されてきたことから、その経験を活かして、市長として行政サービスに活かしたいと考えておられるのでしょう。

だからこそ、この取り組みが実現したのだと思います。

 

自治体により、様々なサービスがありますが、実施しているか否かよりも、その実態が重要です。

ただ、その内容って、なかなか見えるのが難いんですよね。

そういう自治体の実態・実情こそ、市議会議員さんや有識者の方は、例えばSNSなどで発信していくべきだと思います。

その情報の中から、住民が精査をして、首長や議員を選んでいく、自分や家族が住むべき場所を探していくというのも、この時代の選択としてはアリかなと思います。

 

住む場所による地域格差、行政サービスの違いって、思っている以上に大きいですよ。